今日は、令和3年度 第8問について解説します。
土地工作物責任に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。
ア 建物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、一次的には所有者が土地工作物責任を負い、所有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、占有者が土地工作物責任を負う。
イ 建物の管理を行う賃貸住宅管理業者は、建物の安全確保について事実上の支配をなしうる場合、占有者として土地工作物責任を負うことがある。
ウ 建物に建築基準法違反があることによって他人に損害を生じたときは、建設業者が損害賠償責任を負うのであって、建物の所有者及び占有者は土地工作物責任を負わない。
エ 設置の瑕疵とは、設置当初から欠陥がある場合をいい、保存の瑕疵とは、設置当初は欠陥がなかったが、設置後の維持管理の過程において欠陥が生じた場合をいう。
1 ア、ウ
2 イ、ウ
3 イ、エ
4 ア、エ
解説
土地工作物責任に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
建物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、一次的には所有者が土地工作物責任を負い、所有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、占有者が土地工作物責任を負う。
×不適切です。
土地工作物の責任の主体について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
工作物に瑕疵があり、他人に損害を与えたときは、まず工作物の占有者が責任を負うこととなっています。賃貸住宅で言うと借主ですね。
占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意を尽くしていたときは、工作物の所有者が責任を負います。こちらは賃貸住宅で言うと貸主ですね。選択肢は占有者と所有者の記述が逆になっていますね。
つまり、建物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、一次的には占有者が土地工作物責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が土地工作物責任を負います。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
建物の管理を行う賃貸住宅管理業者は、建物の安全確保について事実上の支配をなしうる場合、占有者として土地工作物責任を負うことがある。
〇適切です。
事実上の支配とは、名義上の所有者ではなく、実際にその建物や工作物の管理を行い、安全性の確保に責任を持つ立場にある者をさします。
また、賃貸住宅管理業者がその建物の管理をしているということは、建物や工作物の安全を確保する立場にあるといえます。
これは賃貸住宅管理業者が「適切な建物の安全確保のため事実上の支配」をしている状態であるということができますね。
建物の安全確保について事実上の支配をなしている場合には、賃貸住宅管理業者が占有者として土地工作物責任を負うことがあります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ウ
建物に建築基準法違反があることによって他人に損害を生じたときは、建設業者が損害賠償責任を負うのであって、建物の所有者及び占有者は土地工作物責任を負わない。
×不適切です。
建物に瑕疵があることによる損害は、建築基準法違反が原因であっても、所有者や占有者が土地工作物責任を負います。
建築基準法違反が原因であれば、建設業者が責任を負うことはありますが、だからといって建物の所有者や占有者が責任を逃れるというわけではありません。
つまり、建物に建築基準法違反があることによって他人に損害を生じたときは、建設業者が損害賠償責任を負うことがありますが、これにかかわらず、建物の所有者及び占有者は土地工作物責任を負います。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 エ
設置の瑕疵とは、設置当初から欠陥がある場合をいい、保存の瑕疵とは、設置当初は欠陥がなかったが、設置後の維持管理の過程において欠陥が生じた場合をいう。
〇適切です。
設置当初からの欠陥は設置の瑕疵、後から生じる欠陥は保存の瑕疵とされます。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、正しい選択肢はイとエですので、正解は選択肢③となります。
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